ビジネス関連法律お悩み相談  実務に効く!ビジネスに関連する法律のトリセツ(会社法、M&A、役員の責任など)

ビジネスに関連する法律の裁判例や法律改正を具体的かつわかりやすくご説明します。

就業規則を従業員に不利益に変更するための手続きについて(大阪高判H28.10.26)

就業規則を不利益に変更した手続に違反があったとされた裁判例(大阪高判H28.10.26。以下「本件事案」といいます。)をご紹介します。
就業規則は従業員にとって、とても大切なものです。普段あまり見ないかもしれませんが、仕事をするうえで基本的な条件が記載されています。
従って、就業規則を従業員に不利益に変更するためには、労働契約法第9条、第10条は以下のように定めています。

第9条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働
  者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、
  次条の場合は、この限りでない。

第10条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就
  業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程
  度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との
  交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき
  は、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによ
  るものとする。(以下略)
 
本件事案は、賃金改定(14%減額)をしたのですが、その旨を社内報で告知したのみであったことから、労働契約法10条の上記下線部の要件を満たすかが問題なり、結論としては否定されました。なお、労働契約法10条の定めは、最高裁判例の内容を法律化したものです。
この件では、社内報で、きちんと就業規則の変更となる旨の説明がないことなども否定の理由になっています。逆に言えば、就業規則を改正し、社内報でもその旨をきちんと書いておけば、周知という点はクリアされていた可能性が高いといえます。
 
こういうところが、法律の難しいところですが、面白いところです!